ー Alcatrazz ー 天才ギタリストYngwieMalmsteenを輩出したネオ・クラシカルメタルの名盤

概要

RainbowMichael Schenker Groupでの活躍で知られるレジェンド・ヴォーカリストGraham Bonnetを中心としたヘヴィ・メタル・バンド
Yngwie MalmsteenSteve Vai等、後の技巧派の天才ギタリストを輩出したことでもお馴染み。

Artist

Alcatrazzとは

1983年、Graham Bonnetが、かつて在籍のRainbowのスタイルを踏襲したリーダー・バンド結成に動く。

彼の下には元New EnglandのJimmy Waldo(key)、Gary Shea(b)、そして、スウェーデン出身で元Steelerのギタリスト、Yngwie Malmsteenが参加し、結成。

同年、アルバム『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLLをリリース、デビューを飾る。

そのサウンドはアメリカナイズされつつ、欧州の憂いを秘めた旋律美はGraham在籍時のRainbowを彷彿とさせ、日本では圧倒的な支持を得る。

とりわけ、Ritchie Blackmoreのプレイやパフォーマンスを露骨なまでに意識したYngwie Malmsteenの存在感は突出しており、1984年の初来日公演で大ブレイクを果たす。

Yngwie が放つカリスマ性は、Grahamをも凌ぐ勢いがあり、その過剰人気故にメンバー間に確執が生じてYngwieは程なくして脱退、自身のリーダー・バンドを結成。

バンド・サイドは、Steve Vai (Frank Zappa)を迎え入れ2nd『Disturbing the Peace』(1985)を発表、好評を博す。

しかし、Steveも元Van HalenのDavid Lee Roth Bandに引き抜かれてしまう。その後、『Dangerous Games』(1986)を発表するも人気は低迷、1987年に解散の道を辿る。

2007年にAlcatrazz名義で再始動、2020年には『Born Innocent』を発表するものの、その後、Grahamが脱退というアクシデントは記憶に新しいはず。

おすすめアルバム

NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL

彼らを語る上で、やはり欠かせないのがデビュー作

Yngwie Malmsteenが唯一参加したオリジナル作。「Island in the Sun」に象徴されるキャッチーなナンバーがある一方、「Kree Nakoorie」や小作のインストながら絶対的なインパクトを誇る「Incubus」、「Too Young to Die, Too Drunk to Live」、「Jet to Jet」、「Starcarr Lane」等、ネオ・クラシカルなメタリック・チューンはYngwie Malmsteenの存在効果無くしては誕生し得なかった佳曲だ。

また、メランコリックな「Hiroshima Mon Amour」も名曲の誉れ高い1曲。ハイテク・ギタリスト、Yngwie Malmsteenを輩出させたというメタル・シーンに於ける歴史的意義の大きさはもとより、駄曲一切無しの名盤。

デビュー作にして最高傑作と断言させて頂く。

Youtubeの曲の説明

Island in the Sun

ALCATRAZZ【ISLAND IN THE SUN】Graham_Bonnet

アルバムを飾るオープニング・トラックにしてシングル・カット曲。

Jet to Jet

Alcatrazz Jet to Jet Live In Japan 1984 2018

アルバム及び彼らのキャリアに於いても圧倒的な人気を誇る1曲。但し、ライヴでは高音キーにGrahamの歌唱にかなりの無理があるのは、ご愛嬌か。

Hiroshima Mon Amour

ALCATRAZZ【HIROSHIMA MON AMOUR】Graham_Bonnet

やはり人気の1曲。Graham Bonnetの絶叫型のヴォーカルが見事にフィットしている。

Incubus

Incubus

2分にも満たないインストだが、当時のAlcatrazzの音楽性、世界観を見事に描いている。

Too Young to Die, Too Drunk to Live

Too Young to Die, Too Drunk to Live | Alcatrazz 1984

エキサイティングなメタリック・チューン。

アルバムでは、「Incubus」がプロローグ的な役割を果たしている。

個人の感想

バンド自体は紆余曲折のキャリアを辿っており、必ずしも順風満帆とは言い難かった。と同時にメンバー間にも様々な不安定要素があったことは否定出来まい。

しかし、そうした危機感、緊張感の環境なればこそ、NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』という名盤が誕生したとの思いが強い。それはGraham VSYngwieの構図とも言い換えられよう。実際、Yngwie脱退後の作品には切ない程の哀愁やネオ・クラシカルな様式美は希薄となり、Alcatrazz失速へと結びつく。その初期Alcatrazzらしさは、後年Grahamが参加したYngwie Malmsteen 2世とも称されたテクニカル・ギタリスト、Chris Impellitteri率いるImpellitteriのアルバム『Stand In Line』(1988)で垣間見えるのは、ある種、皮肉にも思える。しかし、『Stand In Line』とて、NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』を凌ぐ衝撃、感動には遠く及ばないのが本音。

後年、Graham Bonnetの取材の際、NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』を持参した。

その時のGrahamの反応は、「ヤツ(Yngwie )が作曲する楽曲はキーが高いんだよなぁ」と苦笑しつつ、ジャケットにサインしてくれたものだ。

自分的にはバンドには円満を望むが、時として一触即発の緊張感が傑作を産む、その象徴的な1作がNO PAROLE FROM ROCK'N'ROLLだと確信する。大好きなアルバムだ。