ーDavid Cassidyー脱アイドルを掲げた ロック・アルバム

概要
ミュージカル・コメディ・ドラマThe Partridge FamilyのKeith Partridge役で一躍70年代を代表するアメリカン・アイドルとして絶大な人気を博す。
俳優業と連動してシンガーとしても活躍、多数のヒットを放つも2017年67歳で没。
なお、写真は全11曲収録の従来のアルバムと2曲カットしたスペイン独自の珍盤10incレコード。

David Cassidyとは

名優Jack Cassidyを父に持ち、1950年、ニューヨークにて誕生。

1970年、The Partridge FamilyのKeith Partridge役に抜擢、同グループ名義のデビュー曲「I Think I Love You」が全米チャートのトップに輝き、一躍アイドルとして脚光を浴びる。また、Partridge Familyと並行してソロ名義で、「Cherish」等のヒットを放つ。アイドル的なイメージが付きまといキャリア的には浮き沈みもあったが、生前、歌手活動はもちろん、アクター、Broadwayのミュージカルでも実績を残している。

おすすめアルバム

『Rock Me Baby』

1972年に発表の2ndソロ。当時はアイドル人気がピークに到達した最中での発表だった。但し、作品的には脱アイドルを目指し、彼自身はblue-eyed soulにトライしたと自負している。実際、楽曲もグラム・ロックやソフト・ロック、ソウルフルなナンバー等、バラエティに富んだ佳曲が並ぶ。タイトル曲の「Rock Me Baby」は、ハードさをブレンド、グラム・ロック的な趣を持った1曲。「Warm My Soul」もblue-eyed soul的な粘っ濃さを持った異色のナンバー。Moody Bluesのヒットで馴染み深い「Go Now」、Young Rascalsの「How Can I Be Sure」等、カヴァー曲も出色のクオリティだ。ソフト・タッチのポップ・バラード「Some Kind of a Summer」はKim Carnesの夫、Dave Ellingson作。そのKim CarnesとDavid Cassidy 共作の「Song for a Rainy Day」は、気怠いムードを醸すバラードで、彼のエモーショナルな歌唱力が際立つ。なお、80年代に「Bette Davis Eyes」で大ブレイクのKim Carnesは、同作でバック・コーラスとしても参加していることも付け加えておこう。プロデュースはPartridge Family 作品同様、Wes Farrellが務めているが、収録曲はシンガー、David Cassidyの等身大に近づけた1作。アルバムは米41位、英2位を記録している。

Youtubeの曲の説明

「Rock Me Baby」

タイトル・トラックでシングル・カットの際は、米38位、英11位を記録している。

David Cassidy - Rock Me Baby (1972 Television Recording)

「How Can I Be Sure」

Young Rascalsのヒットでお馴染みだが、本カヴァーも米25位、英1位と好成績を残している。ソロ時代の代表的なナンバー。

David Cassidy - How Can I Be Sure? • TopPop

「Some Kind of a Summer」

やはり、アルバムでは人気の高いナンバーでフランスでは独自にシングル・カットもされた。

DAVID CASSIDY - SOME KIND OF A SUMMER (COMPLETE)

David Cassidy の主要ブレーンの1人、Adam Miller作。繊細な哀愁のバラードで個人的にも最もお気に入りのナンバーだ。

https://www.youtube.com/watch?v=CEhWktAlF-U

「Go Now」

先述の通り、Moody Bluesで馴染み深いが、David Cassidyは独自のアレンジを駆使、ドラマチックなバラードに仕上げている。

David Cassidy - Go Now (1972)

個人の感想

David Cassidyは、やはり個人的に思い入れが強いアーティストの1人。

一般的にはアイドル扱いに終始してしまうかも知れない。但し、アイドル出身であっても、彼は生粋のアーティストだ。

例えば、Partridge Family名義の作品とて、Wes Farrellを筆頭にTony Romeo、Barry Mann 、Cynthia Weil等、敏腕ソングライターを配し、レコーディング・スタッフもThe Love Generationを筆頭にHal BlaineやLarry Carlton等、一流ミュージシャンが参加している。もっとも、それ故にブレーンによって造られた、操り人形的に捉えられてしまう点も否定はしないが。それでもDavid Cassidyの歌唱力やアーティスティックな面は大いに認められるべき。これから、随時、David Cassidyのレガシーについて触れて行きたいと思う。AORやソフト・ロックという良い意味でのファジーなカテゴライズが許容される今だからこそ、まずは本「Rock Me Baby」の再評価を切に願う。