ーWalker Brothersー日本でBeatlesと人気を二分した白熱ライヴ盤

概要
Scott Walker(vo,b)、John Walker(vo,g)、Gary Walker(ds)によるアメリカのトリオ・グループ。1960年代半ばに本国以上にイギリス、それをも凌ぐ人気を日本で獲得。当時、日本ではBeatlesと人気を二分する程のアイドル人気を獲得している。
実際、来日公演の際は、Beatlesに継いで2番目に武道館を使用したアーティストである。
写真は、当時の来日パンフや音楽誌の特集号。

Artist

Walker Brothersとは

各自が異なる活動を展開していたScott Engel、John Maus[Gary Leedsの3人が集い1964年ロスにて結成。Walker姓を名乗っているが、それはグループの設定上のことで血縁関係は一切ない。

翌年、シングル「Pretty Girls Everywhere」でデビューを果たすも不発に終わる。その後、新境地を求め渡英。

活動拠点をイギリスへ移すと「Love Her」が全英20位を記録、初ヒットとなる。以来、「Make It Easy on Yourself」(英1位)、「My Ship Is Coming In」(英3位)、「The Sun Ain't Gonna Shine Anymore」(英1位)とシングル・ヒットを連発、

一気にブレイクを果たす。

これに呼応する格好で日本でも人気に火が付き、特に清潭なルックスのScott Walkerに熱狂するファンが急増。その過熱人気は凄まじく、Paul McCartney と人気を二分する程だった。

但し、彼らの楽曲、サウンドは当時のビート・ロックやポップスとは一線を画すスタイルで敢えてカテゴライズするならば、ソフト・ロックとなろうか。

取り上げる楽曲もBarry Mann とCynthia Weil、Burt Bacharach 等のカヴァーを中心にPhillip Spectorでお馴染みのWall of Sound的なアレンジが施されているのが特徴だ。

日本独自のヒット「In My Room」は、Scottの退廃的な歌唱も相待って、重厚にしてドラマチック、そして知的なムードが漂う。但し、人気急騰の最中の1967年、グループは解散、各自がソロ活動を行う。

1975年、再結成、アイドル人気は去ったが、「No Regrets」等のヒットを残す。80年代以降は前衛的な音楽スタイルにシフトしたScott Walkerが再評価され、David Bowieを筆頭にThom Yorke、Pulp、Marc Almond、David Sylvian等に多大な影響を与えている。

なお、John Walkerが2011年、Scott Walkerが2019年に他界している。

おすすめアルバム

『Walker Brothers in Japan』

日本市場で最も成功した彼らは1967年のグループ解散後も人気は過熱の一途で、そのファンの要望に応じる格好で、解散から翌年の1968年1月、来日公演を行う。「Walker Brothers in Japan」は、その熱狂のステージの模様を収めた日本独自のライヴ盤。

ライヴ会場には武道館も選ばれている。武道館コンサートは、Beatlesに継いで2番目のアーティストという事実は、その人気が如何に凄まじかったのかを物語る。アルバムは二枚組で、彼らの代表曲をメインにBeatlesのカヴァーやメンバーのソロ曲がフィーチャーされている。

当時のレコーディング技術故、音質はかなりラフだが、その分、ファンの絶叫ぶりがダイレクトに伝わってくるのが嬉しい。後年、Scottはかなりの高額ギャラが提示され、あくまでビジネスとしてステージに立ったと語っていた。ただ、グループ単位ではもとより、カルト・ヒーロー、Scott自身のキャリアに於いても生涯唯一のライヴ音源となったことから歴史的価値は充分だと信じる。

Youtubeの曲の説明

「Make It Easy on Yourself」 3rdシングルで記念すべき全英1位初獲得。

The Walker Brothers - Make it easy on yourself

「The Sun Ain't Gonna Shine Anymore」Frankie Valliのカヴァーながら全英チャートのトップに輝いた彼らの代表曲

NEW * The Sun Ain't Gonna Shine Anymore - The Walker Brothers - Color {Stereo} 1966

「In My Room」

1966年にリリース、トッカータとフーガの旋律をイントロに導入した斬新な1曲。

Scottの憂いを秘めたヴォーカルが際立ち、格調高くもドラマチックな1曲。

日本で大ヒットを記録した。個人的にも大好きな1曲。

The Walker Brothers - In My Room

「Land Of 1000 Dances」 (1966)

Chris KennerやWilson Pickettのレパートリーとしてもお馴染み。グループとしてはロック色の強いアップ・ピートのナンバー。日本でベスト・セラーを記録。

https://www.youtube.com/watch?v=8qz8uq8bT2E

日本で如何にお茶の間レベルの人気であったかを物語るタイアップCM

The Walker Brothers - Japanese Commercial

個人の感想

Walker Brothersは、ここでは語り尽くせない程の思いが深い。メンバー個々のソロ活動等々、挙げれば切りがない程。特に、80年代以降、カルト的なカリスマ性まで他アーティストに称えられたScott Walker前衛的なサウンドをクリエイト、生涯現役を貫いた逸材。かつて、お茶の間レベルのアイドル人気を得つつも、80年代以降のScott活躍が日本では一部のファン層のみ支持され、過小評価気味だったのは個人的には残念でならない。全盛期のWalker Brothersとて、いわゆる、当時流行のピート・ロックやバブル・ガム・ポップ等々とは一線を画した独自の音楽性が魅力的かつ注目すべきポイントと自分は確信する。また、随時、Walker Brothers関連については触れていこうと思う。乞うご期待。